PVDF(ポリフッ化ビニリデン)の表面改質 ― 濡れ性改善で広がる高機能用途への展開 | 事例 | 大気圧プラズマ事業サービスサイト:サンライン
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Case studies

事例紹介

PVDF(ポリフッ化ビニリデン)の表面改質 ― 濡れ性改善で広がる高機能用途への展開

PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、優れた耐薬品性・耐候性・耐紫外線性を兼ね備えた高性能フッ素樹脂です。その高い安定性から、医療用フィルターや高機能膜、精密繊維、電池部材、釣り糸など幅広い産業で利用されています。一方で、極めて疎水性が強く、印刷・接着・コーティングなどの工程で「濡れ性の悪さ」が課題になるケースが少なくありません。

 

PVDFの身近な例では、釣り糸の素材として使われています。

プラスタスの大気圧低温プラズマ処理技術は、こうしたPVDF表面を化学的に表面改質することで、濡れ性や接着性を改善し、これまで難しかったコーティングや接着工程の安定化を実現します。

PVDFはフッ素原子により高い化学的安定性を持ち、耐薬品性・耐候性に優れる一方、表面が非極性で極めて撥水性が高く、水性コーティングや接着剤が定着しにくいという特性を持ちます。
そのため、特に膜や繊維のような微細構造体では、コーティングムラや剥離が製品歩留まりに直結することもあります。

大気圧低温プラズマを用いた処理では、酸素や窒素などの活性種が表面に反応し、–OHや–COOHなどの極性官能基を生成することが期待できます。
これにより、表面自由エネルギーが上昇し、水接触角が低下。従来困難だった水性コーティングや精密接着が可能となります。

 

水接触角による濡れ性改善効果

未処理のPVDFは水接触角が80°以上と非常に高く、強い撥水性を示します。
大気圧低温プラズマ処理後には20°前後まで著しく低下し、濡れ性の向上が確認されています。
この変化により、液体が均一に広がるようになり、塗布ムラや剥離の発生を大幅に低減します。

処理前後の接触角変化:80° → 20°まで低下し、濡れ性が大幅に改善
Before:水滴が丸く残り、コーティングがはじかれる
After:水滴が広がり、濡れ性が改善された状態

応用が期待される分野と事例紹介

事例① 釣り糸・スポーツ用繊維

水中での使用を想定したPVDF製ラインでは、水性コーティングの定着不良が課題となっていました。
大気圧低温プラズマ処理により濡れ性が改善し、塗布ムラや剥離が減少。コーティング均一性の向上と製品外観の安定化に寄与しました。

事例② 高機能膜・精密濾過膜

医薬・食品・水処理用途の膜製造では、コーティングやラミネート工程で密着不良が発生していました。
プラズマ処理の導入により、表面の親水化と密着性が向上し、膜性能の安定化と加工歩留まりの改善が確認されました。

事例③ 医療・バイオ用精密フィラメント

血液分離用チューブやバイオセンサー部材など、高精度かつ清浄性が求められる製品において、表面コーティングの定着不良を解決。
乾式処理によるクリーンな改質で、医療・バイオ用途への応用が期待されています。

 

業界別の導入メリット

釣り糸・スポーツ用繊維業界

導入メリット:コーティング密着性の向上、外観品質の安定、耐久性改善

お問い合わせ例:「コーティングがはじかれる」「染色ムラをなくしたい」

高機能膜・精密濾過膜業界

導入メリット:コーティング・ラミネート密着性向上、膜性能の安定化

お問い合わせ例:「加工歩留まりを改善したい」「密着不良を低減したい」

医療・バイオ関連業界

導入メリット:表面加工・接着の安定化、非接触・非溶剤処理による清浄改質

お問い合わせ例:「精密コーティング工程を安定化したい」「薬剤を使わずに濡れ性を改善したい」

開発・評価対応のご案内

当社では、PVDFをはじめとする高機能樹脂の表面改質に関して、

・接触角測定や表面分析による改質効果の確認
・ガス種や出力条件を最適化した試験処理
・量産ラインへの適用検証

を一貫してサポートしています。

水や薬剤を使わずに濡れ性を改善したい、
高付加価値用途での歩留まり向上を目指したい――
そんな課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。

※ 本記事は、PVDFの大気圧低温プラズマ処理事例と研究データをもとに構成しています。
濡れ性や接着性の改善に関する評価・試験をご希望の方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。