PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の表面改質 ― 医療機器・精密部品における濡れ性・密着性の改善を支える大気圧低温プラズマ処理
PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、スーパーエンジニアリングプラスチックの中でも特に優れた耐熱性・機械強度・耐薬品性を持つ高機能樹脂です。医療機器や精密機構部品など、高信頼性を求められる分野で幅広く利用されています。一方、その高い化学的安定性ゆえに、印刷・接着・コーティングの各工程で「密着しにくい」「塗布ムラが出る」といった課題が生じやすい素材でもあります。
プラスタスの大気圧低温プラズマ処理は、薬液を使用せずにPEEK表面を改質し、濡れ性や密着性を高めるドライプロセスです。常温・常圧で動作するため既存ラインにも組み込みやすく、環境負荷の低減と工程の安定化を両立します。

PEEKおよびスーパーエンプラの特徴と改質の必要性
PEEKは芳香族ポリエーテルケトン系の熱可塑性樹脂であり、250℃を超える高温環境でも優れた寸法安定性と機械強度を維持します。また、耐薬品性・耐摩耗性・電気絶縁特性にも優れており、PPS・PEI・PIなどと並ぶ代表的なスーパーエンプラです。
しかしながら、表面は疎水性かつ非極性であるため、インキや接着剤が定着しにくく、印刷・接着・コーティング工程での密着性低下が課題になります。特に、微細形状を持つ精密部品では、従来の薬液処理やプライマー塗布が困難な場合も多く、乾式で安定した改質技術が求められています。
大気圧低温プラズマによる改質メカニズムと効果
プラスタスの大気圧低温プラズマ処理は、常温・常圧環境下でPEEK表面に選択的な改質を行うダメージフリープロセスです。酸素・窒素・二酸化炭素・空気・アルゴンなどあらゆるガスをプラズマ化するマルチガス仕様により、目的に応じて処理特性を最適化できます。
- 酸素系ガス:濡れ性の向上
- 窒素系ガス:接着強度の向上
プラズマによってPEEK表面が表面改質されます。これにより表面自由エネルギーが上昇し、水接触角が低下。インキや接着剤との濡れ性・密着性が大幅に改善されます。

プラズマ処理前
プラズマ処理後医療・精密機構分野における応用事例
事例① 医療機器用ハウジング部材
印字やマーキングの定着性が向上し、薬液洗浄後の剥離リスクを低減。耐滅菌工程にも対応できる安定した密着性を実現しました。
事例② 精密分析装置用ジョイント部品
接着剤や封止材の密着性が向上し、液漏れや剥離トラブルを防止。薬液を使用できない工程でも適用でき、封止信頼性を高めます。
事例③ 小型センサー・フィルター部材
コーティング剤の均一塗布が可能になり、膜厚ムラを低減。感度や検査精度の安定化に寄与します。
導入のポイントと効果
- 常温・常圧・乾式処理による環境対応型プロセス
- 薬液を使わないため安全で清浄な処理環境
- マルチガス制御により材料ごとの最適条件設定が可能
- ダメージレス処理で高価な精密部材にも適用しやすい
開発・評価対応のご案内
当社では、PEEKやPPS、PEIなどのスーパーエンジニアリングプラスチックに対して、以下のような対応が可能です。
- 接触角測定・表面分析による改質効果の確認
- ガス種・出力条件を最適化した試験処理
- 量産ラインへのスケールアップ検証
「薬剤処理を減らして工程を簡素化したい」「PEEKへの印刷・接着を安定化したい」「既存設備に後付けできる乾式プロセスを検討したい」――こうした課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。実サンプルでの試験処理や条件最適化の共同検討にも対応しております。