アルミニウム表面の高精度クリーニングと濡れ性向上 ― 大気圧低温プラズマによる薬液不要の表面改質
アルミニウムは、軽量・高強度・優れた導電性や熱伝導性を併せ持つ汎用金属として、電機、輸送、医療など幅広い分野で利用されています。
しかしその表面は空気中で瞬時に酸化膜を形成し、加工工程で付着する微量な油分や有機残渣の影響を受けやすいため、塗装や樹脂接着の前処理で「濡れ性の不安定化」や「密着ムラ」が生じることがあります。
近年では、ナノレベルの接合・精密コーティングが求められる中、薬液を使わずに安定した表面改質を実現するドライプロセスとして、大気圧低温プラズマ処理が注目されています。

大気圧低温プラズマによる改質メカニズム
プラスタスの大気圧低温プラズマ技術は、酸素・窒素・アルゴンなどのガスを用いて安定した非熱平衡プラズマを生成します。
プラズマ中の活性種がアルミ表面に作用し、アルミ表面に付着した微小な有機残渣を分解・除去します。
有機残渣(炭化水素系汚染物)がプラズマによって酸化し水と炭酸ガスに分解されることで除去され、さらに官能基が形成されることで表面自由エネルギーが上昇し、水や接着剤が均一に広がる「濡れやすい表面」へと変化すると考えられます。
さらに、プラスタスのプラズマは「大気圧・非接触・低温・放電損傷を与えないダメージフリー」でプラズマ処理できるため、アルミ基材の結晶構造や寸法精度を損なうことがありません。
真空装置を必要とせず、連続ライン上で処理できる点も、生産現場での導入を後押ししています。
水接触角による濡れ性改善効果
下図は、アルミニウム試験片に対して大気圧低温プラズマ処理を行った前後の水接触角を比較した例です。
処理前は約70〜80°の疎水性を示していた表面が、処理後は20°以下まで低下し、明確な親水化が確認されました。
この濡れ性の変化は、インキ・樹脂・コーティング剤などの界面挙動に直接影響し、密着強度の安定化や界面欠陥の低減に寄与します。




清浄化と再付着防止 ― 薬液に頼らないナノレベル洗浄
プラズマ中の活性種は、表面に残留する油膜や有機汚染物を酸化分解すると同時に再付着を防止します。
これにより、薬液洗浄のような界面活性剤残渣が残らず、ナノレベルの清浄度を薬液フリーで実現できます。
特に加工工程後の“最終仕上げクリーニング”として、接合・塗装・コーティングの前処理や微細構造部品の洗浄、医療用デバイスの乾式洗浄などに導入されています。
異種素材接着への応用
アルミニウムと樹脂、アルミニウムとセラミックスなど、異種素材間の接着では界面の分子間力の差による接着性の差異が剥離要因となり、接着剤の適切な選定や接着面の改善が大きな課題となります。
プラズマ処理によって、接着阻害要因となる有機残渣の除去や接着官能基の付与することで、接着強さの向上が期待できます。
さらに、プライマー削減や薬液処理の省略にもつながり、工程短縮と環境負荷低減を同時に実現できます。
実装・運用面でのメリット
プラスタスの大気圧低温プラズマ装置は真空設備を必要とせず、既存の搬送ラインに容易に組み込むことができます。
酸素・窒素・空気など、目的に応じたガス選択によりプラズマ処理条件の最適化が可能で、金属・樹脂・複合材など多様な基材への適用に対応します。
高い再現性と省メンテナンス性により、研究開発から量産工程まで幅広く活用されています。
導入効果と今後の展望
薬液を使用しないドライクリーニングプロセスは、環境対応や省人化、品質安定化の観点から注目が高まっています。
大気圧低温プラズマは、薬液洗浄の代替・補完技術として、濡れ性・密着性の安定化や異種素材接着の信頼性向上に寄与します。
現在、アルミニウム-プラスチックの異種接着における改善や、環境負荷低減のため薬液工程削減などの課題をお持ちの企業様からも、多くのご相談をいただいております。
試験サンプルでの比較評価や最適なプラズマ条件選定のサポートも行っていますので、ぜひご相談ください。