高濃度PFASを大気圧プラズマで超高速分解 | 事例 | 大気圧プラズマ事業サービスサイト:サンライン
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Case studies

事例紹介

高濃度PFASを大気圧プラズマで超高速分解

高濃度PFASを高速かつ現地で分解する新しいアプローチ

 PFAS(有機フッ素化合物)は極めて分解されにくい物質として知られ、処理には高温焼却など大規模な設備が必要とされてきました。株式会社サンラインのプラスタス事業部では、大気圧プラズマを用いることで、高濃度PFASを現地かつ短時間で分解する新たな技術を開発しました。本事例では、PFAS分解における技術的課題と、それに対する当社のアプローチ、実証結果について紹介します。

PFASが抱える分解・処理の課題

 有機フッ素化合物(PFAS)は、溶剤、界面活性剤、繊維・紙・プラスチックの表面処理剤、半導体原料など、幅広い分野で利用されてきました。一方で、一部のPFASは環境中で極めて分解されにくく、土壌や水域への残留、さらには健康影響への懸念が国際的に指摘されています。

 PFASが分解困難とされる主な理由は、炭素‐フッ素結合(C–F結合)が非常に安定である点にあります。一般的な加水分解、光分解、微生物分解では十分な分解が進まず、PFAS含有廃棄物の処理には約1,100℃以上の高温焼却処理が推奨されるなど、処理方法は限定的でした(出典:環境省 水・大気環境局環境管理課有機フッ素化合物対策室「PFASハンドブック」令和7年3月)。
このため、高濃度PFASを安全かつ効率的に分解する新たな技術が求められてきました。

 大気圧プラズマを用いたPFAS分解技術の概要

 このような社会的背景を踏まえ、株式会社サンラインのプラスタス事業部では、液体中に溶解したPFASを対象とした大気圧プラズマ分解技術を開発しました。

 本技術は、空気を用いて生成した大気圧プラズマをPFAS水溶液に直接照射することで、PFAS分子を分解するアプローチです。プラズマ中に存在する高エネルギー電子や各種活性種が、安定なC–F結合を含むPFAS分子に作用し、分解反応を誘起すると考えられています。
真空環境や希ガスを必要とせず、大気圧下で処理できる点は、従来技術と比較して大きな特長です。

 実証結果:高濃度PFASの高速分解

 本技術の有効性を確認するため、PFASの代表的物質であるPFOA(ペルフルオロオクタン酸)を対象とした分解試験を実施しました。
PFOAを5,000 μg/L含む水溶液に対して30分間の大気圧プラズマ照射を行った結果、処理後の濃度は39 μg/Lまで低減し、約99%の分解が確認されました(中外テクノス株式会社調べ)。
本結果は、PFASを吸着材や膜によって回収・濃縮する手法とは異なり、PFASそのものを分解する技術である点に特長があります。高濃度PFASを短時間で処理できることから、実証試験や現地処理への適用可能性が期待されます。


図.プラズマ処理によるPFOA濃度の変化

 また、本技術は真空環境や希ガスを必要とせず、大気圧下かつ空気を動作ガスとして利用できる点も大きな特長です。これにより、設備構成や運用の自由度が高く、研究施設や実証現場において導入しやすいPFAS分解技術としての活用が期待されます。

 液中有害物質処理に広がる大気圧プラズマ分解技術

 本技術はPFAS分解を目的として開発されましたが、その原理はPFASに限らず、液中の界面活性剤や難分解性有機物、有害化学物質にも適用可能です。大気圧プラズマによって生成される活性種により、既存の処理方法では分解しにくかった物質に対しても分解効果が期待できます。例えば、工業排水中の界面活性剤、機能性材料由来の添加剤、洗浄後に残留する微量有機物などを対象とした用途での活用が想定されます。吸着や回収ではなく分解処理である点も、本技術の特長です。
また、本技術は大気圧・空気動作で運転可能なため、真空設備や薬液を必要とせず、設備構成や運用面での負担を抑えられます。既存プロセスとの組み合わせや、研究・実証段階での評価試験や特注試験装置の開発・販売にも柔軟に対応可能です。
PFASを含む液中有害物質の処理や、新たな分解技術の検討を進めている場合には、対象物質への適用可能性評価からご相談いただけます。自社課題に即した技術選択の一助として、本技術をご活用ください。

 

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